昨日、偶然図書館で手にとって、初めて岡本太郎の本を読み、非常に衝撃を受けた。

社会人生活もそろそろ10年が過ぎ、だんだん毎日の生活に慣れてしまい、生活の中に新鮮な驚きを見つけることがほとんどなくなってしまったことに時には苛立ちを覚えながらも特に何か行動を起こすこともなくなんとなく生きる日々が続いていた中で、そのような生活を断ち切る勇気をくれた本。人生は積み重ねではなく、積み減らしであり、知識や財産を蓄えれば蓄えるほど守りに入ってしまい、人間らしい歓喜あふれる生き様ができなくなってしまう。今までの積み重ねなんて忘れて、安全な道と危険な道があったら危険な道を進め、失敗したっていいじゃないか、というメッセージに打ちのめされた。

こういう、人生の指南書的な本としては、「うらおもて人生録」に今まで読んだ中では一番影響を受けたが、この本はそれに匹敵するぐらいのインパクトがあった。

うらおもて人生録 (新潮文庫)

うらおもて人生録 (新潮文庫)

「うらおもて人生録」は、あくまで社会と折り合いをつけながら、社会で生きしのぐにはどうすればよいかについて語った本だが、「自分の中に毒を持て」は、そもそも社会と折り合いをつけるな、と言っており、根本的な思想から違う本だが、どちらも著者本人の生き様がストレートに伝わってきて、何度も読み返したくなる本だと思う。ただ、色川武大がこの本は劣等生向けだとまさに書いているように、「うらおもて人生録」は世の中の90パーセント以上の人にとって直接間接に参考になる内容を含んでいるが、「自分の中に毒を持て」は、1パーセントにも満たないかもしれない天才にしか真似のできない内容の本だと思う。凡人にとって、社会とのつながりを断ち切って生きていくということは、想像を絶するほどの苦しみでありとても耐えられないだろう。ちょっと唐突だが、やはり昨日見たNHKの「ワーキングプア」の最後のほうで、かつて路上生活者としてゴミ漁りをしていたが今は曲がりなりにも定職を持つようになった人のコメントとして、昔は生まれてこなければよかったと思っていて、今でもそういう気持ちがあり、完全に社会復帰してはじめてそういう気持ちがなくなるだろうと言っていた。そうなのだ、社会復帰という言葉が示すように、天才ではない普通の人にとって、社会とのつながりを絶ちながら、そんな自分を受け入れて強く生きていくことなど不可能なのだと思う。だからといって、岡本太郎の言っていることがまったく役に立たないというわけじゃない。彼は「歓喜」という言葉が好きで、幸せな人生じゃなくて歓喜あふれる人生を送るべきだという。そのためには、今までの自分に対するこだわりなんて捨ててしまえ、なんて文章を読むだけで、なんだか勇気が湧いてくる。本物の情熱を感じる。そんな、情熱あふれる生き方をしたい、そう思うだけで、より人間らしく生きていけるような気がする。